生きるために

 *あかねのイタリ珍プレー*



球目生きるために


今までのアホエッセイには似つかわしくない真面目そうなタイトルだが・・別にそんなことはない。

今回は、あたしが怖いもの知らずにも向こうで仕事をした時の事を書いてしまおうかと。


現在はあたしがいた頃よりもずっと厳しくなっているが、外国人が仕事をするのは

これ、ほんとお〜〜に難しい。

と、いうか基本的には留学生は仕事をしてはいけない。

初めてあたしがイタリアへ逃避行した頃は、冗談抜きで向こうへの移住を考えていたが

出発前に一生懸命に集めていた情報があまりにも曖昧で、ヴィザの事など仕事の事など

行ってみないとわからないという結論にしかならなかった。

3ヶ月近く本当に必死に、イタリアで暮らす方法を探し回った。

あげくの果てにはとある日本食レストランへ

「仕事の募集はしていないでしょうか?」とイキナリ電話をかけた。

幸い面接はしてくれたものの、その時ヴィザがなかったあたしはもちろん話にならず。

その時は帰国するしかなかった。


そして、地獄のような学生ヴィザ獲得作戦を終え、2度目の渡伊。

ほんとは学生ヴィザがあっても、仕事をしてはいけないのだ。

留学生のバイト。それはイタリア語で言ういわゆる「ネーロ(黒)」と呼ばれるもので

ウラ的な行為なのだ。

ま、そうは言ってもごく普通にみんなやっていることで雇う方もさほど気にはしていない。

そういう話を帰国前に聞いていたため、どこかで仕事を探そうとは思っていた。


とはいえ、まあそういうことは抜きで、

前の滞在時に何度か通ったお鮨屋さんへ顔出しがてら出かけた。

そこは、前に住んでいた所からかなり近かったため行ってみたら

なんだかそこの大将とよく話すようになり・・・

一度お友達を連れて行くと

なんとそこの社長夫婦二人とも彼を知っていて、大笑いしたということがあった。

まあ、そんな不思議な縁もあり。

2度目に行った時は2日目くらいにすぐゴハンを食べに行った。

「帰って来たのか!いつ帰ってきたんだ?」などと言う話から入り、

色々他の従業員の人たちともお話をしていたが・・・

大将があたしの座っていたカウンターの横のほうに来てくれた時、

あたしは恐れもせずに《当たって砕けろの精神で》思わずこう言ってしまった。


「雇って下さあ〜い」


おいおい、よく言ったもんだ。

我ながら恐ろしいよ。

だが

大将はさらに驚く事にこう言ってくれた。


「雇って・?かあちゃんに相談してみるー」

あたしから言ったものの、まさか受け入れてくれるとは思わずこっちが「え!?」となってしまった。


その後、奥さんがほんとに面接をしてくれて

なんと寛大な事に客→従業員にしてくれたのだ。

その話を友達にすると必ず

「積極的だねー」「度胸あるねー」など言われる。

まあそれだけあたしも生きることに必死だったために、ああいうことができた。


そこでお仕事をさせてもらったおかげで

たくさんの良い経験

そして良い友達が出来た。

彼らとは、2年ほど経った今でも交流がある。

夢は少し方向が変わったけれど、あの時のあたしは自分でも頑張っていたと思うし。

無駄な経験など、ひとつもないと胸を張っていえるようになった。